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惑星idiot
- 2008/08/11(月) 00:27:11
私はベンチに座っている。
周囲には空を眺める少年が一人。
辺りを見回しても誰もいない。
親とははぐれてしまったのだろうか。
無邪気なものだ。
現在自身のおかれている状況なんて、
己の好奇心の前では些細な問題なのであろう。
「キミ。」
何となしに話しかける。
「なに?」
「お父さんとお母さんは?」
「おうちにいる」
どうやら迷子ではなかったらしい。
「そろそろ、おうちに戻ったほうがいいんじゃないかい?」
「パパとママが外で遊んできなさいって。それにまだ、だいじょぶ」
大方鐘が鳴ったら帰ってきなさいとでも言われてるのだろう。
「おじさんはなにしてるの?」
「・・・まだお兄さんだ。街を見ているんだよ。」
「おもしろい?」
ずいぶんと答えにくい質問をする。
子供はこういうところが怖い。
「面白いけど、楽しくはないね。」
「ふーん」
私に対してそれほど興味など持ち合わせていなかったのだろう。
そう一言言うと少年の瞳は上へと向けられた。
「キミは何をしているんだい?」
「ながれぼしを見てる。それでお願い事をしてるの。」
流れ星か。そういえば久しく見ていない気がする。
今まで生きてきて空を見る余裕なんて有りはしなかった。
就職してからなんて顔色と地面ばかりと睨めっこだ。
ちっぽけな人生だ。
「・・・何をお願いしているんだい?」
「ひみつー」
少年は満面の笑みと共にそう答えた。
・・・ドーン・・・
どこか遠くのほうで何かの落ちる音が聞こえた。
「ながれぼしが落ちてきた!」
そう言うと少年は音のした方へと走り出した。
「転ぶぞー」
まだ明るいから平気だとは思うが一応忠告をしておいた。
少年は忠告には耳も貸さず消えていった。
「流れ星ねぇ・・・」
少年がいなくなったので私はたばこに火をつけた。
今、この時間人々はそれぞれにとって最良の行動をしているのだろうな。
そいつらから見れば私は最良とは程遠い行動をしているように見えるのだろう。
もっとも、もう他人の評価などはどうでもいい。意味がないのだ。
しばらくそうしていた。
少年が戻ってくる気配はない。
ちらほらと落ちてくる流れ星でも探しに行っているのだろう。
そろそろ日が沈む時間だ。
この見飽きた太陽も最後ともなると若干の美しさがあるように思えた。
今のこの状態はその場しのぎの最良を選び続けた結果だ。
いわば自業自得である。
目線を上にやった。
そこには数多くのひびが見えた。
亀裂が入る瞬間にはバチッっと電流が走っていた。
所々抜け落ちた穴からは濁った空が顔をのぞかせていた。
日が沈んだ。
ほぼ同時に空に数多のヒビが入る。
「そろそろか」
次の瞬間には空が落下してきた。
今にも堕ちてきそうな空の下であの少年は目を輝かせていた。
せめて彼がなにも知らずに、解らずに、安らかに逝くことを願っておこう。
この大量の流れ星のうちのどれかは叶えてくれるだろう。
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